緊張の面接
いよいよ面接当日、、、
着慣れない一張羅のスーツに袖を通し、チャリンコで面接へと向かう。
どうせ働くなら家から近い方が楽なので、チャリンコ通勤出来る範囲で職場を探していたのだ。そこで見つけたのが家具のリペア工房だったのだ。
工房から50m程離れたコンビニにチャリンコを停め、面接時刻の30分前には到着していた。
僕は待ち合わせなどの時間にはすごく敏感で、ギリギリに到着なんて事はありえない。
とにかく人を待たせるのが嫌なのと、遅れてすみませんと謝るのが嫌なのだ。
あとは方向音痴なので、迷ってしまったとしても間に合うように早め早めに行動する癖がついている。
しばらく付近をウロウロと徘徊したり、飲みたくもないジュースをコンビニで買って飲んだりしながら、面接までの時間を不安と期待で心臓をバクバクさせながらやり過ごしていた。
それでも時間を持て余していたので、あたかもただの通行人を装い、工房の前を通りすがりざまに後ろを振り返るフリをしながらチラ見ッ、、、前向いてチラ見ッと工房を覗いてみたものの、そこには家具も置いてなけりゃ、USENからの洒落たミュージックも流れていない、コーヒーの香りも全くしない、、、むしろ雑多でだだっ広く、近くを流れるドブ川の匂いしかしない、人の気配も無い。っていうかお世話とも綺麗とはいい難い古びた倉庫だった。見たところ1階が倉庫で2階が事務所っぽかった。
これはイメージと違いすぎる、、、
むしろこんな廃墟のような小汚い倉庫で毎日朝から晩まで働くのはちょっと、、、
どないしよ。
急に不安が押し寄せる。
しかし、面接までの時間はもうすぐそこまで迫っている。
面接をすっぽかして帰ろか、、、
いや、それは人てしてダメだ、ここまできて引き返すわけには行かない。
今日はたまたま、お洒落職人さんが出払っているだけだ、、、
昨日の雷でUSENが故障していてミュージックが流れていないだけだ、、、
と自分にいい聞かせ、倉庫の階段をゆっくりと登っていった。
ハリウッド俳優がお出迎え
コツコツコツ ふぅ、、、ガチャッ。
僕
「こんちわ!面接に来たケーシーと申します!」
面接官
「いやー、どうもどうも、お待ちしておりました。こちらへどうぞ〜」
やたらとダンディーな、それはまるでハリウッド俳優のジョージ・クルーニーのようなイケオジが僕を出迎えてくれた。
辺りを見渡すと、事務所内には20〜30人程の事務員であろう人達がガヤガヤと業務に明け暮れていた。
パソコンでひたすらキーボードを打ち込む者。
ひたすら鳴り続ける電話に対応する者。
無の境地でボーっと天井を眺めている者。
ギャルメイクのギャル。etc.
外観からはとても想像できないほどの、忙しない光景を横目に応接室へと入っていった。
面接官(ジョージ)
「志望動機は?」
僕
「はい!手先が器用なので、家具のリペアに興味がありまして、手に職をつけたいと思い応募しました!(家から近所で楽そうだから応募しました!!)」
面接官ジョージ
「うちはかなり体育会系のスタッフが多いけど大丈夫?」
僕
「はい!生まれも育ちも体育会系です!」
僕が当時住んでいた団地から自転車で15分ぐらいと、かなり近所だった事もあり、通勤も楽だし、帰るにも近い。
これで仕事内容も良ければ最高なのだが、あまりにもイメージとかけ離れていた。
お洒落さなんて欠片もない。
体育会系て、、、どうしよう、、と心の中で自問自答しながら面接を受けていた。
面接官ジョージ
「じゃこのテストやってもらえる?」
僕
「はい!わかりました!」
真っ直ぐに線が描けるかテスト
色がちゃんと識別出来るかテスト
など、見たことも無い独特なテストを終え、30分もしないうちに面接も終わった。
面接官ジョージ
「じゃ来週から研修あるから参加してもらえる?」
僕
「はい!わかりました!」
来週から研修って事は、これ合格って事なん?
と、合否もよくわからないまま、帰り際にジョージから
真っ青なブルゾンの制服を渡された。
もうそれはそれは青い青い。青を通り越して、赤に見えるくらい青かった。
ジョージ
「これ着てきてね〜」
制服が、くそダサかった。
でも受かっちゃったからやるしかない。
帰りしな、夕焼け空は、真っ赤っかだった。
ここから僕のリペア人生が始まったのである。
つづく。
ほなまた!